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「多習」と「精習」

何か学習していても思うように上達しないなと悩んでいる人、あなたは「精習」ばかりしていませんか?

「精習」とは、字の如く精度や正確さを高めるための練習ですので、決まった字、手本だけを集中して繰り返して書く練習方法です。当然、字の形や筆使いの正確さを高める事は必要ですが、特に初心者に陥りがちな現象として、熱中するあまり手本からどんどん離れていくという事。真剣になればなるほど、また焦るほどに視野が狭くなり(ムキになり)、結果として書けば書くほど纏まりが無く手本から離れてしまいます。

例えば学生の頃のテストを思い出して下さい。分からない問題にぶち当たったら、それはそのままにして次に進むでしょう。楽器を習う際も、最終目的は曲の最初から最後まで弾けるようになる事のはずで、テクニックはそのために必要な要素です。ある技術につまずき、その技術を習得する練習は大切ですが曲全体の世界観をつかむ事も同時に大切です。語学も然り。単語や文法の習得は大切ですが、一つの単語や文法のつまずきばかりに捕らわれると全てが滞りますよね。

ですから私は日頃から一つの手本に囚われず、数多くの字や手本を書くべきと指導しています。これは私が師匠から言われてきた事でもあります。習い始めの頃はこの事にピンとこなかったのですが、指導してみると実感する場面が多々あります。

昇級・昇段試験に挑戦する場合や展覧会に出品する場合、締切が近づくにつれ焦るのはとてもわかりますが、何度か書いてみて思うように進まないと感じたら迷わず次に進むなり、他の課題や手本を取り組んだ方が、結果として書道の経験値は上がり、上達に繋がります。私の師匠は展覧会に出品する際は、一つしか出品しない場合でも必ず複数の作品を同時進行するようにと助言します。これもやはり一つの世界に縛られないように、またどちらかに行き詰っても他の作品に向き合うことで心が楽になるからです。とにかくその世界での経験値を積む事に尽きます。自分が積んできた経験は自分の引き出しになり、いつか絶対に自分を助けてくれます。

これは私の感覚ですが、普段は数多くの字を書き込む「多習」をし、定期的に添削を受け指導された箇所はすぐに復習する。そしてまた次に進んで「多習」を行う。そして提出の期日が迫ってきたら、時間を決めて集中して「精習」する、という学習方法が最も効果的だと思っています。言ってみれば「広く浅く」と「狭く深く」のバランスです。どちらも必要ですが、片方だけに集中してはいつまで経っても総合力が身につきません。そしてたまに自分の取り組み方をもう一人の自分の視点から俯瞰してみる(自分と向き合う)習慣も大切です。

指導者によっては私と異なる事を言われる事もあるでしょうが、知っていて損になる学習方法ではないはずです。それから上達の前提として自習は必須です。書道は語学やスポーツ、音楽と同じように自己練習無しには絶対に上手くなりません。とにかく練習(多習)あるのみ、上手く書けないなら人の2倍書けばいい。人の2倍書いても上手くならないなら3倍、4倍と書くだけです。

練習は裏切りません。書いた分だけ絶対に上手くなりますので、現在、自分の上達が感じられないのなら練習方法を変えてみる試みはしてもよいはずです。

因みに私は最近、精習の量を増やしているのですが、集中力が必要となるので長くは続けられません。レッスンの合間、小刻みに時間を区切って気分転換で多習をし創作もしています。辛いと思えばいくらでも辛くなる芸術の世界ですが、楽しい事を探し出したら無限にあるのも芸術の世界です。

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アドバイス

今朝の金環日食は世紀の天体ショーなどとも呼ばれ、関東地方では173年ぶりとの事。雲の切れ間から観測された方は多かったでしょうね。私は、、、というと仕事が長引き朝の5時半に就寝したので観測は諦めてベッドの中でした。今思うとせっかくの機会、惜しい事をしました。

ところで指導をしていると悩みが尽きません。勿論、誰でも生きている以上、常に悩みと隣り合わせなのですが、指導者となると、その場で回答を出さなければならない場面が多く、いつまでも悩みを引きずっていられません。また相手がいるので、言葉を選ぶ事も必要になるし、むしろ相手のモチベーションを上げる事を忘れてはいけないですし、また大抵の場合、そのような場面は突然やってきます。そしてその場で回答しなければならない。

それでも技術面での指導については、「こうあるべき」「こうするべき」という形や状態があるので、だいたい答えは一つの方向でまとまるのですが、一番難しいのは作品講評です。講評となると私の価値観というフィルターを通さざるを得ません。でも私の価値観や好みをどこまで通せばいいのか、この匙加減は難しいものです。指導とはいえ、相手がいるのですから相手の個性を尊重しなければならないという思いから、ついついブレてしまいがちなのですが、先日のある体験を通し、一つの解を得ました。

ある生徒さんが「次回のレッスンで以前書いた作品を見て欲しい、そして感想を述べてほしい」と言ってきました。正直なところ、そう言われて私は「面倒だな・・・」と思いました。というのも以前書かれた作品というのは別の先生の指導のもとで書かれたものなのです。もしその別の先生と私の意見が正反対の場合、生徒さんはその現実を消化し、受け止められるのかと思いましたが、以前から度々言われていたので承諾しました。

そして約束通り、次回のレッスンで大きな作品を二つ持参されてきたので、私は「嘘も方便」は使わず、本音で意見を述べました。まずそれぞれの第一印象や良い点を伝え、その後で「もし私ならこうする」という視点でアドバイスしていきました。迷いなく、明確にポイントを絞って、そしてズバズバと指摘、アドバイスしたつもりです。

ひととおり講評を終えてから生徒さんの表情を窺ったのですが、以外にもその生徒さんの目はキラキラし、興奮している様子でした。そして「そのような発想はなった」「そんなアドバイスしてくれた先生はいなかった」と言われました。こんなに興奮して感謝してくれるとは思わなかったので、むしろ私のほうが嬉しくなったぐらいです。

そうなんです、指導者は時に生徒さんに新しい発想や価値観を持つきっかけでなければなりません。生徒さんの価値観や意見を尊重しすぎると、その生徒さんは既存の殻にとどまるだけ。指導者として確たる信念があるのなら、もしかしたらキツいかな、厳しいかなと感じるような事でも勇気を持ってアドバイスしなければならない。

この体験を通して今は少し自分の考えやこれまで続けてきた事に自身を持てるようになりました。勿論、今後の指導の中で同じようにアドバイスしても反発される事もあるでしょう。でも私は指導者として、書道の先輩として自信を持ってこうした方がいいと思う時は、信念を持ってアドバイスしていこうと思っています。

そのためには日々の修業の積み重ねが大切。身を引き締めて一日一日を大切にしていかなければ。

それにしてもあの時の生徒さんの笑顔、本当に素敵でした。あの笑顔は一生忘れません。

エナジーチャージ完了!

GW後の初めての週末ですね。このGWに私はまた中国へ行ってきました。そして先日の金曜日は本当に久しぶりの中学校の同窓会がありました。ということで、この2週間ほどは私にとって良い刺激を受けた、意義深い時間でした。

中国では北京と上海に行きましたが、日本では感じる事の出来ない事を肌で沢山感じてきました。あれだけの広い国ですから、ちょっと観光といっても移動距離も長く、当然沢山歩く事となりかなり疲れるのも事実です。また凄まじい経済成長の真っただ中にある国にも関わらず、まだまだ外国人に対しては優しくない面が多々あるので苦労する事もイライラする事もあります。日本以上に英語は通じないし、独特のカルチャーもあります。それでも今回で5度目の中国という事もあり、少しずつ彼らの考え方や行動を理解し、だいぶ滞在中のストレスが減ってきたのを感じました。まあ、とにかく日本での常識は通用しないのですから、割り切るしかないというのが正しいですけれどね。

今回は観光と道具の購入が大きな目的でしたが、道具の購入は楽しくもあり、難しくもあり、まだまだ結果には納得していません。

中国に行くたびに筆は買っていますが、買って良かったと納得できる筆は一本しかありません。もっと言うと、筆においては日本の方がはるかに高品質だという意識が変わりません。もう少し高価でも良いから良い筆を見せて欲しいと言っても良い筆にはなかなかめぐり合えず、今回も5本筆を買って帰り、昨日までに2本使ってみましたが、今のところ全敗です。まだ結論を出すには早いかもしれませんが、やはり職人の腕の違いだと思っています。毛自体には差は無いので、その毛をどのように扱い、筆に仕上げるかという人間の手での工程の質の違いとしか思えません。中国では遥かに低価格で筆が変えるので、例え日本の半値でも相当良い筆を求める事が出来るはずと思い、中国ではそれなりの値段の筆を買っているのですが、難しいですね。もう諦めて、日本で良い質の筆を丁寧に長く使う方が良いのかなと思っているところです。

でも道具を見て回る時間が楽しいし、中国は同じ業界のお店が一つの通りに集まっている場合が多いので、一つの通りを歩くだけで何軒もお店を見て回れるし、通りの雰囲気が素敵なんです。北京では「瑠璃廠」という通りが道具街になっていて、滞在中に二回も行きました。各店の看板を見るだけでも楽しくて、キョロキョロしては撮影し、入店するという行動を繰り返していました。

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なかなか納得のいく筆と出会えませんが、それでも今、密かに楽しみにしているのは以前から使ってみたいと思っていた孔雀の羽の筆を今回購入したので、その筆でどのような作品が仕上がるか、あれこれ想像する事です。かなり墨をはじきそうなので、良い意味で私の意図通りにはならない作品になるはず。淡墨をたっぷりと含ませ、一気に書き上げる一文字や二文字の作品だと以外な線が出て楽しそう。

そして話題は飛びますが、先日の中学校の同窓会への出席も良い刺激となりました。北海道の釧路市にある中学校の同窓会を東京で開催出来た事も素晴らしいし、ほぼ卒業以来に再会する仲間だというのにすぐ打ち解けて盛り上がれる事も素晴らしいし、同窓生がお互いの分野で活躍している話からは沢山パワーを貰いました。同世代だからこそ言葉を超えて感覚で分かりあえる事もあり、かなり臭いけれど、中学校の同窓生は私の誇りだなと感じました。こんなに素晴らしい仲間と過ごした三年間があったから今があるんだ、なんて思うぐらいです。今回の同窓会に至るまで、忙しい仕事の合間を縫って地道に卒業名簿から現在の所在を確認して新しい名簿を作成してくれている仲間、フェイスブックの管理人としてこまめに情報をアップしてくれる仲間が居る事に感謝もしています。

広い東京の中で同窓生が立派に活躍している様子を知り、私も次の個展に向けてそろそろ腰を上げようかと思ってきました。精神的にも肉体的にも、もっと言うと金銭的にも厳しいのですが、創作する者としては発表していかなければ上昇していけない。思い出すだけで苦しく辛くなるので、もう暫くゆっくりしていたいのも本音ですが、皆も頑張っているのだから、私も頑張らなくちゃね。切磋琢磨とはまさにこんな事だよね。

今年の春は素敵な春です。

プロフィール

書道家(書道師範)、東京生まれ、北海道育ち、現在都内在住

美帆

Author:美帆
書道家(書道師範)、東京在住。あおい書道教室を主宰、大人から子供までを指導。作品制作においては、国内に限らず海外へも活躍の幅を広げ、多方面で活動中。

毎週月曜日夜間クラス(場所:新橋、成人対象)、隔週火曜日午後クラス(場所:高島平)の生徒募集中です。
レッスンの詳細はホームページ
(https://www.miho-ismt.com)をご覧ください。
お問い合わせはホームページ、または本ブログのメールフォームからお願いします。

出張指導にも応じています。プライベート、グループ(企業・団体への出張可)でのレッスンなど初心者から師範取得まで柔軟に対応いたします(級、段の取得可能)。

いまさら聞けない筆使いの基本、臨書の学習方法、創作の基本、理論などに特化した経験者向けの指導も可能です。既に他の教室で習っているものの行き詰まりを感じている方、伸び悩んでいると感じている方、私をセカンドオピニオンとしてお気軽にご相談ください。

作品制作、看板文字、ロゴデザイン制作なども承っております。お気軽にメールフォームよりお問い合わせください。

(注)プライベートレッスンについては、女性限定とさせていただいております。

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