2013/07/26
感動のあと
ひと頃の猛烈な暑さから一転、ここ数日は過ごしやすい気候が続いていますね。でもこのまま夏が終わる筈は無く、またあのねっとりとした暑さに苦しめられる長い夏はまだまだ続きます。水分、睡眠をしっかりとって、夏に負けないようにしたいものです。個展に向け、書ける時間はどんどん短くなり、まさにラストスパートの時期を迎えました。泣いても笑っても、あと2~3ヶ月しか書けないと思うと、やはり焦ります。ここまでいつもよりも淡々と過ごしていましたが、やはり最後は悪あがきとなりそうです。なるべく後悔せずに終えたいと思うし、人さまに見て頂く以上は以前よりも少しでも進化している作品を書かなければという思いもあります。少し精神的に辛い時期ですが、この辛さとしっかり向き合い、良い緊張感を保ちつつ、集中力を高めて冷静に取り組もうと思っています。
そんな中、まあ予想通り行き詰ってきた感じから抜けきらない状況になった事もあり、毎日書道展で特別展示されている「手島右卿の書芸術-その世界性」を見てきました。きっと何か得られるものがあるだろうと、この展示の開催を知ってからずっと期待し楽しみにしていたのですが、期待や楽しみどころか、ただただ感動するばかりでした。書道をされている方なら手島右卿の名前やその作品に触れた事があるはず。私もずっと憧れ、いつか辿り着きたいと思っている世界なのですが、本物を目の前に私は言葉を失いました。「これが本物なんだ」という感想しかありません。墨色、構成、線質、呼吸、そして臨書の上手さ、どれをとっても学ぶ事ばかりで、作品から放たれるエネルギーに包まれるだけの時間でした。このような深い感動は何年ぶりだろうか。。。
感動という言葉、私は安易に使わないようにしている言葉の一つです。心の底から揺さぶられ、言葉を失う程の、まるで脳天に稲妻が落ちるほどの思いというのは、そうそう経験出来るものではないと思うからです。人生で指折り数えるほどしかない、それほどの深い衝撃を伴うものが感動だと思っています。その指折り数えるほどしかない数回のうちの一回が、私にとってこの展覧会でした。
大人になって、だんだん毎日が惰性になり、判で押したような時間を過ごしがちになる中で、本当に感動する事が出来た事、幸せだと思っています。そして感動と同時に、自分の未熟さをまざまざと見せつけられ、もっともっと精進せよと言われたような気がしました。
この感動から新しい着想に至り、最後のラストスパートの方向性が定まりました。やはり今年の夏は熱くなりそうです。暫く寝ても覚めても創作の事ばかりの日々ですが、このギリギリの緊張感も妙に気持ちが良いものなのです。期間限定だから味わえる苦しみとも言えます。
時間が許せば会期中にもう一度、手島右卿の書を見に行きたいと思っています。今は苦しいけれど、振り返った時にその何倍も何十倍も収穫のあった夏にしたいです。あのような大きな感動を味わい、エネルギーを一杯身に受けたのだから、何だかやれそうな気がしています。

皆さまも、どうぞ良い夏をお過ごしください。


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