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手本

今日は朝から雨模様。湿度が高いものの、気温が低めで救われます。

昨日のレッスンで「手本」について、少し生徒さんと自由に話していて、改めて感じる事がありましたので、ブログで私の「手本」のあり方についての意見を述べてみたいと思います。手本については過去にも何度かブログに書いているので、もしかしたら内容がダブるかもしれませんが、その点はご容赦を。

書道教室では先生に手本を書いて頂く度にレッスン料とは別に料金が発生する場合があります。数千円から、公募展対策だと高い場合では数十万円という料金設定も決して珍しくありません。私は手本を書くのにお金を頂く事はありません。手本が必要な生徒さんには指導の一環で書いて渡します。手本が無い方がよい生徒さんには口頭のアドバイスはしますが、本人の力を付ける為にも見守ります。また「手本」が全てではないと、口酸っぱく言い続けています。(この場合の手本は古典を指していません。先生が書いたものです)

このように私は生徒さんの実力と性格を考慮して、手本があった方がいいのか、無い方がいいのか、見極めながらご指導しています。ですから、手本を与えると判断すればそれは私の指導の一環の中ですから、追加で料金は頂きません。また手本を書かない生徒さんに対して、手抜きになっているかといえば、実はむしろ逆なぐらいです。最初に手本を書いて渡さないだけで、書いている過程では何度も添削し、添削のついでに参考として手本を書く場合は沢山あります。

書道という表現を、ひとりひとりがどのように繰り広げるか、可能性をなるべく狭めず、個性を発揮させていくとなると、先生の手本が邪魔になる場合があると思っています。中には、この点を理解して最初から手本は参考としながら書き進める生徒さんもいますが、手本が全てという思いが強い生徒さんは、手本そっくりを目指し、こだわる必要が無い細部までこだわり、逆にこだわるべき点はすっかり蔑ろになり、足腰の弱い、うわべだけを撫でただけのような内容になる事は少なくありません。書道は手本のコピーを作成する作業ではないんですよ。

ですから無条件に新しい課題の度に先生が手本を書いて、生徒さんは言われるまま手本料を払い、手本と同じものを書かせるという指導方法に私は疑問を抱きます。本当に一人ひとりの実力と個性を見極めているのだろうか?その手本が生徒さんの上達を妨げていないか?失敗から学ぶことが最大の勉強なハズではないか?手本が必要なレベルの生徒さんへは、当然のごとく何度でも書いてあげるべきではないのか・・・。何しろ手本を書くたびにお金を要求するなんてセコイですよ、指導者として。

振り返ると、私は師匠から手本を渡されたことは一度もありませんでした。また要求したことも一度もありません。まず自ら草稿を書き、何となく方向性が決まったら見て頂く、をひたすら繰り返してきました。今もそうです。

まさに今、新しい作品の草稿の準備の作業中です。机の上には書道字典や墨場必携、そして手書きメモで一杯になります。少しずつ頭の中が整理され、作品のイメージが固まってから実際に筆を執り草稿を書きます。この段階では誰からのアドバイスもありません。自分で考え練るのみ。産みの苦しみでもありますが、新しい第一歩でもあるので楽しいものです。

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せっかく書道を習うのなら、「自分の」作品を書いていく事を大切にして欲しいと切に思っています。手本から離れる勇気も場合によっては必要ですよ。そして「自分の」作品を書くには自分が抱いたイメージを具現化する力が必要ですが、その力は古典からでしか学べないのです。

日頃から古典と創作をバランスよく学習する事、とても大切ですよ。

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ふと感じた事

6月も下旬になりました。まだ6月なのに蒸し暑いですね。今年は猛暑になると報じられていますし、梅雨が明けたら・・・と思うと、少しウンザリしますね。とにかく体調管理を怠らず、心身とも良い状態で過ごしたいものです。

昨日、ふと思ったんです、「最近、本を読んでないな」と。これ、正確に言うと、本はしょっちゅう読んでいるんです。でも書道関連の本や創作の題材になる詩歌や漢詩の本ばかり。そういえば先月、台北に行った時に書道関連の書籍は随分買ってきたばかり。そうじゃなくて、全くのプライベートに楽しむ本を読んでいないんです。

このところ、なんだか頭の中に余裕が無い感じはこのせいだったのかもしれません。

余暇を楽しむ、無心になる、ゆっくり時の流れを感じる・・・案外難しい事ですよね。まだ個展までだいぶ時間もあるし、何となくですが、創作のペースも良い状態で回ってきだしたし、未来の自分の為にも、少し余裕を持った時の流れを大切にしなければ、と感じた週末でした。

明日からまた一週間が始まります。そろそろ今年の半分も終えようとしています。「自分に無理なく、自然体で」を当面のモットーにレッスンに、創作活動に精進していきたいと思っています。

皆様もバランスを大切に、健やかに楽しく梅雨の時期をお過ごしくださいませ。

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『王羲之から空海へ』展

とうとう梅雨入りし、急に湿度が上がり、どんより曇り空に覆われてしまいました。気温もぐっと下がり、体調を崩しやすくなりますね。梅雨明けまで暫くの間、傘やレインシューズの出番が多くなりますね。

先月、ブログで「行くか行かないか迷っている・・・・」と書いていた「王羲之から空海へ」展ですが、実はちょっと無理して行ってきました。台湾旅行の翌週、この展覧会を見るだけの為に大阪へ日帰りで行ってきたんです。今となっては無理しても行って良かったです。

日帰りで、しかも東京に戻る時間が決められていた状況だったので、当日は早朝の新幹線に乗り、美術館へはほぼ開館と同時に入場しました。この「王羲之から空海へ」展は大阪市立美術館開館80周年記念としての特別展との事で、会期は4月12日から5月22日まで。私が行ったのは5月20日で、終了間際でもあったせいか、開館時からかなりの混雑でした。

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中国と日本の名だたる書跡が勢揃いで、じっくり見るにはいくら時間があっても足りないぐらいでした。有名な「蘭亭序」や「集王聖教序」などは複数の拓本を並べて展示しているので、拓本による違いも良く分かり、全体に共通する雰囲気も感じ取られました。

日中、それぞれの展示は時代ごとに分けられて、見やすい展示がされていました。一つ残念といえば、中国の書跡で、金文や隷書が無く、南北朝時代では鄭道昭や龍門造像記が無かった事ですが、あれだけの規模の展示館となれば、多方面からの貸し出しの調整に相当手間がかかるでしょうから、文句は言えません。(呉昌碩も見たかったなぁ。。。)

空海の風信帖は、これまでに何度も見ていますが、今回見た時は今まで感じなかった線の立体感を感じられました。もしかしたら照明の具合(光の当て方や色など?)の違いなのかもしれませんが、今までよりも線が強く、生き生きと感じられ、自分でも不思議な気持ちになりました。

帰りの新幹線の時間も決まっているので、時々時計を気にしながら何とか全て見て回り、最後に図録を買って新大阪へ。切符買って、お昼ご飯のお弁当買って、、、で、殆ど余裕無く帰りの新幹線に乗り込みました。この日は朝食も昼食も新幹線の中でお弁当、大阪滞在時間はほぼ4時間、何とも慌ただしいスケジュールですが、贅沢といえば贅沢過ぎる美術鑑賞。

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台湾の故宮博物院と、大阪の「王羲之から空海へ」展を短期間で集中して鑑賞できた5月はその後の創作にとても良い影響を与えてくれました。歯車が噛み合い、徐々にスピードも増して、目標に向かって進み出したような、そんな感じです。

やっぱりインプットは大切です。インプットしないでアウトプットだけ求めるなんて、貯金していないのに利息を求める事と同じ。人間、所詮は自分の経験した事しかできないのです。天性とか、才能とか、感性とか、、、色々仰る方が多いですが、それらは努力したからこそ発揮されるもの。そして見るなら最高のものを見るべきです。最初は分からなくても、見ているうちに目が肥えます。分からなければ、レッスンの中でどんどん先生に質問してみて下さい。鑑賞のポイントや、歴史や、書道理論や技法など色々話が膨らみ、次第に楽しくなると思います。

古典の勉強はやればやるほど楽しく尽きないなぁ、と感じる今日この頃です。そんな私が今取り組んでいる古典は「十七帖」。何度も繰り返して全文を臨書しています。何度書いても発見があるし、難しいです。でも、ほんのちょっとだけ上手く書けるようになった気もします。

梅雨の季節、外出が億劫な時には本腰を入れて臨書するのもいいですよ。

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台北の書道道具店情報

台湾旅行の目的は、書道道具の買い出しでもあったので、今回訪れたお店の情報についてまとめます。とは言いながら、買い物中は自分の買い物の事で頭が一杯になり、ひたすら店内で物色して、気が付くと何と写真の一枚も撮ってこなかったのです。

記憶とお店のレシートなどをもとに情報をまとめます。

場所は前のブログでも書きましたが、師範大学の通りです。通りの名前は「和平東路一段」で、地下鉄の古亭駅を降りて目の前の通りです。この通りの左右に幾つか書道道具店があります。

全部を見尽せませんでしたが、お店の規模や品揃えが豊富だと感じたのは「蕙風堂」です。「蕙風堂」は店舗が二つあり、一つは書籍が中心で、もう一つは道具が中心でしたが、どちらも見やすい店内の雰囲気でした。書籍に力を入れているようで、「蕙風堂」が出版している本が沢山ありました。日本の出版物の扱いもありました。私はここで書籍を3冊購入しました。カード使用もOKです。

購入したのは「古代図形文字藝術」、そして最近とても好きな王鐸の図録2冊。王鐸の図録は2冊とも蕙風堂出版のものです。

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「古代図形文字藝術」は創作にとても役立ちそうです。内容は金分だけを収蔵した字典ですが、見ているだけで想像力を掻き立てられます。実はこの手の資料は、今までずっと地道に自分でアナログ的に収集してノートにまとめていたので、見つけた瞬間は涙が出るほど嬉しかったです。

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他には筆を三つのお店で購入しました。一軒目は「友生昌筆墨文具荘」、二軒目は「九怡堂」、そして「國泰棉紙有限公司」。筆の質は一軒目→二軒目→三軒目という印象です。今回は柔らかい山羊の筆のほか、硬めの馬の筆なども見たかったので、一軒目と二軒目で山羊の筆、三軒目で馬の筆を購入しました。

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既に買った筆は使用していますが、まあまあといったところです。飛び切り良い羊毛をお求めなら、やはり日本で買った方がいいという印象は変わりませんが、普段に使うには全く問題ないレベルですし、中国よりは台湾の方が全体的に質は高いと感じます。そしてお値段は日本よりお得感はあります。

勿論、ここで紹介したお店以外にも書道道具専門店はありましたので、台北で書道道具を買ってみたい方は、少し時間に余裕を持って師範大学前の通りを歩いてみてはいかがでしょうか?

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台湾旅行(その3)

6月に入りました。そろそろ梅雨入りですが、今日はすっきり晴れた青空。眺めているだけで平和な気持ちになります。でも今年も半分がそろそろ終わると考えると複雑ですね。丁度、個展まで一年となりました。過去の個展と比べても今回は準備が捗らず、不安や焦りもするのですが仕方ありません。気負っても良い結果は生まれません、とにかく精神的に充実した状態でい続ける事を大切にしています。

そろそろ台湾旅行の報告も片づけなければなりません。今回のその3は最終日の故宮博物院の見学についてです。故宮でゆっくり時間を割きたかったので、この日の予定は故宮博物院の見学だけにしてありました。地下鉄の士林駅からバスで10分ぐらいで着きました。市街地から少し離れた、山に囲まれた場所にあります。

故宮博物院の沿革については、是非調べてみてほしいです。もともと北京の故宮に所蔵されていた宝物がどのような経緯で、最終的に極一部(全体の三割)が台北へ移されたのか、知れば知るほど複雑な思いになります。故宮博物院では館内での撮影は禁止なので、写真は入り口での撮影のみ。

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チケットを買い、簡単な荷物検査のあと入場。私はお目当ての「歴代十七帖方書名品展」の会場(204・206陳列室)へ直行。

十七帖は私が本格的に書道の勉強を始めたときに、一通り勉強した後に”みっちりと”取り組んだ最初の古典なので個人的に深い思い入れがあり、今でも大好きな古典の一つです。そして来年の個展では大型の臨書作品の展示を計画していて、今、まさにその制作に奮闘しているところです。

日本人には「三井本」や「上野本」がお馴染みだと思います。最後に「勅」字がある所謂「館本」と呼ばれているものですね。私は特に「三井本」が好きで、勉強すればするほど三井本の特徴である断筆が切れ味に繋がり、小気味よく、臨書が楽しいのです。

今回の展示も「館本」の一つが展示されていました。また展示は拓本だけではなく、歴代の書家が臨書した十七帖の展示もあり、各々の個性を感じる事ができました。蘇軾は蘇軾らしく、細部への拘りよりも流れる様子が面白く、趙孟頫はやはり線が強く骨格がしっかりした印象でした。珍しいものでは、紺紙の扇型の紙に金泥で書かれたものや、乾隆帝が臨書したものなどもありました。

じっくり鑑賞した後は、残りの展示室を時間の限り見て回りました。疲れたら書店やミュージアムショップを覗き、また鑑賞し、一度は展示スペースから退出してコーヒーショップでお茶タイムにしました。再入場を希望する場合は、退出時に腕にスタンプを押してもらいます。

陶器もかなり見ごたえがありました。しかし全てを見尽すには時間が足りませんでした。残念ですが、また次回に来る口実として故宮博物院を後にしました。

話は逸れますが、館内はかなり冷房が強く(台湾はどこでも冷房がすごく強い!)、体は冷え切り手足はとても冷たくなりました。外は30℃ぐらいなのでノースリーブのワンピースに長袖の綿のカーディガンを着ていましたが、コートが欲しいぐらいです。冷え性の人は靴下や保温性のある上着を持参するとか、体温調節ができる服装がいいと思います。

翌日は早朝便で日本へ帰るだけなので、故宮博物院の見学が台湾旅行の締めくくりとなりました。翌日は4:30に起床、チェックアウトもすぐに済み、ホテルからタクシーで空港へ。乗り遅れる事なく無事に羽田へ戻ってきました。

今回の旅行、勉強面でも遊びの面でも大変満足しています。これから暫くまとまった休暇は取れないと思いますので、この良い思い出を大切に、これからは創作のペースを上げるぞ!と気持ちはやる気に満ちているところです。

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プロフィール

書道家(書道師範)、東京生まれ、北海道育ち、現在都内在住

美帆

Author:美帆
書道家(書道師範)、東京在住。あおい書道教室を主宰、大人から子供までを指導。作品制作においては、国内に限らず海外へも活躍の幅を広げ、多方面で活動中。

毎週月曜日夜間クラス(場所:新橋、成人対象)、隔週火曜日午後クラス(場所:高島平)の生徒募集中です。
レッスンの詳細はホームページ
(https://www.miho-ismt.com)をご覧ください。
お問い合わせはホームページ、または本ブログのメールフォームからお願いします。

出張指導にも応じています。プライベート、グループ(企業・団体への出張可)でのレッスンなど初心者から師範取得まで柔軟に対応いたします(級、段の取得可能)。

いまさら聞けない筆使いの基本、臨書の学習方法、創作の基本、理論などに特化した経験者向けの指導も可能です。既に他の教室で習っているものの行き詰まりを感じている方、伸び悩んでいると感じている方、私をセカンドオピニオンとしてお気軽にご相談ください。

作品制作、看板文字、ロゴデザイン制作なども承っております。お気軽にメールフォームよりお問い合わせください。

(注)プライベートレッスンについては、女性限定とさせていただいております。

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