2012/03/18
筆の選び方(初心者向け)
ひと雨ごとに春を感じるようになってきました。街を歩いていても、少しずつ花がほころび出すのを見る事が出来て、自然の生命の力強さを感じ、力付けられる事もありますよね。今回は道具の事について日々思っている事を書いてみようと思います。教える立場となると、生徒さんからは色々な質問を受けるようになります。当然、道具についての質問は多く、買う際のアドバイスからお手入れ方法まで、内容も幅が広いです。それだけ書道は道具が多く、また扱い方も神経を使う割には学校では正しく指導されていないのも実情です。
私が感じている範囲で、一番多い質問は筆についての事です。筆は何と言っても書道の命ですから、筆は良い物を使う方が良いに決まっているし、お手入れにも気を使って欲しいものです。

↑私の筆のほんの一部。全部お気に入りの羊毛の筆です。ここにある筆は短いものでも毛足が10cmぐらい。
先日、ある生徒さんから「インターネットで筆を買ってもよいのか?」と質問されましたが、私は躊躇う事なく「それはやめてください」と返答しました。何故インターネットショッピングが駄目なのか・・・理由は何点かありますが、分かり易い例えは靴を買う場合と一緒だから、という事です。靴を買う時は必ず試着しませんか?例え同じサイズでも靴によって微妙に違っていたり、デザインが気に入っていても、実際に履いてみるとしっくりこなかったり、歩きずらかったという経験は誰にでもあると思います。筆も同様で、同じような価格帯に沢山の種類があり選びきれないと思いでしょうが、実際に手にとってみると、自分の手に合ったものと合わない物が分かれてくると思います。軸が長いものはコントロールしずらいですし、軸が細いものは書いているうちに疲れてきます。また一人一人の手の大きさ、腕力が異なりますし、技量も異なるので、私が使いやすいものが万人に使いやすいものと一概に言いきれない場合もあります。実際、私が初心者の頃、使いこなせなかった高価な筆も今となっては難なく使いこなせています。ですから、筆を買う時は面倒がらずに、お店に行って実際に手にとって選ぶべきです。
もう一つのポイントとして、良い筆で練習した方が早く上達するという事も忘れないでほしいです。初心者だから高い筆なんて勿体ないと思っている方が本当に多いのですが、ほどほどに良い筆で練習するべきです。「ほどほどに」というところが、これまた難しいのですが、とても高い筆は羊毛(ヤギ)の毛の場合が多くコシが無くて使いづらいので、一応の目安として、私は初心者の方には3000円~5000円ぐらいの筆で、自分に手にしっくりするものを買うようにアドバイスしています。
それから、高い筆は決して無駄になりませんので、”何だか心が惹かれる”筆に出会ったら買ってみる事もお勧めです。例えその時に使えこなせなくても、実力がついてくれば使える時が必ずやってきます。
色々書きましたが、結局のところ、道具を選ぶ目も経験を積むしかないという事に尽きます。どれを選べばいいのか分からないという不安、道具屋に行くのが面倒という気持ちもわからないでもないですが、億劫がらず道具屋に行って、時にはお店の方にアドバイスを求め、知識を積む場という気持ちで、楽しんでほしいと思っています。どのお店が良いか・・・これはそれこそインターネットを使ってみて自宅の近くや職場の近くなど行きやすいお店を探されてはいかがでしょうか?そして例え道具選びに失敗しても、その失敗は決して無駄にならないという事も忘れないでほしいです。
インターネットで買ってもよいものは、墨汁、紙(使う銘柄が決まっている場合のみ)、手本や書籍(これも内容を理解している場合のみ、表紙やタイトルだけで買うのは危険)、あとは下敷きや文鎮などの小道具で、文房四宝(筆、墨、硯、紙)は自分の目で確かめて買う物です。
さあ、春本番を迎えます。普段使っている道具はキチンと手入れが行き届いているかチェックするのもいいですね。


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