2012/05/21
アドバイス
今朝の金環日食は世紀の天体ショーなどとも呼ばれ、関東地方では173年ぶりとの事。雲の切れ間から観測された方は多かったでしょうね。私は、、、というと仕事が長引き朝の5時半に就寝したので観測は諦めてベッドの中でした。今思うとせっかくの機会、惜しい事をしました。ところで指導をしていると悩みが尽きません。勿論、誰でも生きている以上、常に悩みと隣り合わせなのですが、指導者となると、その場で回答を出さなければならない場面が多く、いつまでも悩みを引きずっていられません。また相手がいるので、言葉を選ぶ事も必要になるし、むしろ相手のモチベーションを上げる事を忘れてはいけないですし、また大抵の場合、そのような場面は突然やってきます。そしてその場で回答しなければならない。
それでも技術面での指導については、「こうあるべき」「こうするべき」という形や状態があるので、だいたい答えは一つの方向でまとまるのですが、一番難しいのは作品講評です。講評となると私の価値観というフィルターを通さざるを得ません。でも私の価値観や好みをどこまで通せばいいのか、この匙加減は難しいものです。指導とはいえ、相手がいるのですから相手の個性を尊重しなければならないという思いから、ついついブレてしまいがちなのですが、先日のある体験を通し、一つの解を得ました。
ある生徒さんが「次回のレッスンで以前書いた作品を見て欲しい、そして感想を述べてほしい」と言ってきました。正直なところ、そう言われて私は「面倒だな・・・」と思いました。というのも以前書かれた作品というのは別の先生の指導のもとで書かれたものなのです。もしその別の先生と私の意見が正反対の場合、生徒さんはその現実を消化し、受け止められるのかと思いましたが、以前から度々言われていたので承諾しました。
そして約束通り、次回のレッスンで大きな作品を二つ持参されてきたので、私は「嘘も方便」は使わず、本音で意見を述べました。まずそれぞれの第一印象や良い点を伝え、その後で「もし私ならこうする」という視点でアドバイスしていきました。迷いなく、明確にポイントを絞って、そしてズバズバと指摘、アドバイスしたつもりです。
ひととおり講評を終えてから生徒さんの表情を窺ったのですが、以外にもその生徒さんの目はキラキラし、興奮している様子でした。そして「そのような発想はなった」「そんなアドバイスしてくれた先生はいなかった」と言われました。こんなに興奮して感謝してくれるとは思わなかったので、むしろ私のほうが嬉しくなったぐらいです。
そうなんです、指導者は時に生徒さんに新しい発想や価値観を持つきっかけでなければなりません。生徒さんの価値観や意見を尊重しすぎると、その生徒さんは既存の殻にとどまるだけ。指導者として確たる信念があるのなら、もしかしたらキツいかな、厳しいかなと感じるような事でも勇気を持ってアドバイスしなければならない。
この体験を通して今は少し自分の考えやこれまで続けてきた事に自身を持てるようになりました。勿論、今後の指導の中で同じようにアドバイスしても反発される事もあるでしょう。でも私は指導者として、書道の先輩として自信を持ってこうした方がいいと思う時は、信念を持ってアドバイスしていこうと思っています。
そのためには日々の修業の積み重ねが大切。身を引き締めて一日一日を大切にしていかなければ。
それにしてもあの時の生徒さんの笑顔、本当に素敵でした。あの笑顔は一生忘れません。


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