2015/05/18
この時期に集中する問い合わせ、、、とは
毎年、決まってこの時期、そうGWが明けて少し落ち着いた頃、決まった層からのお問い合わせが集中します。決まった層とは、ズバリ小3のお子さんをお持ちの親御さんです。何故小3に限定されるか、それは小3から書写の授業で毛筆が始まるからです。始業式から一か月経ち、この「毛筆」という何とも厄介なものとどう向き合うべきか、ちょうど結論が出る時期なのですね。そして色々とご希望などをお聞きすると、これまたほぼ同じ内容の事を仰います。
「できれば出張してほしい」
「月に2回程度で」
「夏休みはしっかり休みたい」
「でも冬休みは書き初めの宿題があるから、月に何度も稽古してほしい」
そして本人(子供)の意志は二の次
といった具合に随分とご都合のよい条件で技術を習得しようと思われています。お手軽に、お気軽に身に付くなら私も苦労しませんし、世の中、書道家だらけです。
すみません、少し嫌味が過ぎました。でもスポーツでも音楽でも語学でも、それなりの実力を身に付けるとなると、とにかく練習量を増やすしかありません。どんなに才能がある人でも練習しなければ開花しませんし、ひたむきに練習する人にはかなわないものです。
そこで私が言いたいのは、まず本人の気持ちを確認する事です。本人が好きならば続けられるからです。本人の気が向かないのなら、無理にやらせるのは逆効果になる事が多々あります。その次に、書道を習わせる目的を改めて考えみてほしいです。「綺麗な字を書けるようにさせたい」という回答がほとんどではないでしょうか。中には集中力を付けさせたい、自分が昔やりたかった、書き初め大会で良い賞を取らせたい、、、という理由もあるようですが。
ではもう一段追及していきます。「綺麗な字」とはどのような字でしょうか?現在の自分の生活を振り返ってみてください。「もう少し綺麗な字が書ければな、、、」と後悔する場面はどのような時ですか?私は色々な場面でこの質問をしてみますが、多くの大人は冠婚葬祭の時と答えます。「自分の名前ぐらいは自信を持って書きたい」と答える方も多いですね。
つまり毛筆ではなくペン字(硬筆)なんです。熨斗袋は正確には毛筆なのでしょうが、今の熨斗袋には「寿」「御霊前」はすでに印刷され、自分の名前のみ書く場合がほとんど。その名前を書く時に硯、墨、小筆を持ちだす方はどれぐらいでしょうか?今ではサインペンで書かれている方も沢山お見受けします。
何が言いたいかというと、お子様には必ずしも毛筆を習わせなくても良いのではないですか、硬筆だけにしたらいかがですか、ということ。これは書道家である私が言うことではありませんし本望でもありません。でもお稽古はしたくない、でも上手になりたいと言われると、人並みに努力している人と同じ結果は得られないのは明白。目的を字形を正す事に絞りそれに集中する方法もあるのではないかと思っています。実際、毛筆ならではの筆使いの習得は子供にとっては難しく何度も何度も繰り返しが必要なので、私の目の前では上手にできても、稽古が終わったら忘れてしまい、学校では全く出来なくなっているという話は稀ではありません。やっていく中で毛筆にも興味を持ちだしたら、毛筆も平行して両方学べばいいだけです。
書道、習字を習わせればすぐに字が綺麗になると思っている方が多いのですが、毛筆は字形だけでなく筆使いも学ばなければなりません。低学年の子供の頭では字形と筆使いを一度に消化する事はとても難しいのです。そしてすぐに忘れてしまいます。ですから習っていた頃はまあまあ上手だったけれど、やめたらすぐに字が乱れたという体験談が多いのです。また毛筆(硬筆)は上手だけれど、硬筆(毛筆)は下手くそ、という人も多いわけです。ずっと長く続けるつもりで習うなら、是非とも両方を頑張ってほしいですが、1、2年でやめるつもりなら、その短期間で生涯にわたって自信となる確かな技術を一つでいいから身に付けるのも一つではないかと思います。
昨今は書道教室もかなり減り、本当は習わせたいけれど近くに教室が無い場合もあります。子供向けの硬筆指導をしていない教室もあります。また他の習い事や塾がある、中学生になれば部活と、やりたくても時間の遣り繰りが出来ない場合もあるでしょう。そんな時は一度、目的を確かめてみてください。それから決して親の理想を子供に押し付けないでください。
もう一つ言っておきますと、硬筆は鉛筆の持ち方をチェックし、丁寧にゆっくり書く癖をつけるだけでもかなり変わります。これなら家庭内で出来る事。お金も時間もかけずにすみます。硬筆については過去に何度もブログで書いておりますので、そちらも参考にして頂けると幸いです。


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