2015/07/09
筆使いの「基本のキ」
梅雨空が続きますね。気温はさほど高くないものの、湿度が高くて不快ですね。早く梅雨明けしてほしいやら、でも夏本番の厳しい暑さもうんざりやら、、、でも確かに季節は巡っています。今回は筆使いの「基本のキ」について少し技術解説を。初心者(初心者だけではないですが)を指導していると、どの方も横画と払いの筆使いに苦心されています。今回は横画についてご説明します。
横画の始筆の状態をイメージしてください。一般的な楷書の始筆は入角が45度~60度ぐらいが適当です。角度を確認して紙に筆を置いたらその状態のまま右に移動すれば横画です。こう書くととても簡単なのですが、ほとんどの方は入角の角度はほぼ大丈夫なのに、送筆部分からだんだんおかしくなり、正しく終筆がなされていません。
ところで始筆の際、紙に筆を落とした時の筆の穂先の状態について確認したことはありますか?
このように↓なっていませんか。上手い描写ではないですが、穂先全体が釣り針の形、もしくはひらがなの「し」の形になっていないでしょうか?これは紙の上を筆で撫でているような状態で、線質は弱くなります。

初歩段階ではこれでも良いでしょうが、このように↓穂先が「S」の形になるように改めてみてください。

腕の力を肩の付け根から肘、そして手首、最後に筆の穂先へと流し込み力を紙に注ぐようなイメージをするとよいでしょう。以外と力が要ります。常に穂先の弾力を感じれると思います。上手くできなければ、筆を上から下(紙)へ垂直に降ろしてみてください。程よい力を入れながら落とすと、紙に着地した時に穂先がバネのようにグニャリと弾力を帯び、穂先が「S」の形になります。筆を握る指もそれなりの力で握らなければなりません。
この「S」の字の穂先が出来たら、線に立体感が生まれ線質はぐっと良くなりますよ。横画の時はこの「S」の形のまま右へ異動すれば難なく終筆ができるわけです。書道は「始めよければ終わりよし」です。逆にスタートが悪ければ、悪いまま終わってしまいます。
「S」の字の穂先は横画に限らずあらゆる場面で活躍します。大字を書く時は立ったまま、中腰で書くのですが、その時にも大いに発揮します。柔らかい羊毛の筆の扱いにも、繊細な渇筆にも、あらゆる場面で必要となる大切なテクニックです。
何となく線にキレがなかったり、作品全体が重い場合は筆使いの「基本のキ」の見直しをしてみてください。それからこれはオマケですが、初心者の人はとにかく筆の運びが早い(雑)です。特に左右の「払い」や「はね」はゆっくり丁寧に最後まで自分で面倒を見ましょう。
ブログでは対面での指導はできませんので、普段のお稽古の場で先生の筆使いをしっかり観察し、上手くできなければその場で質問して解決し、自習の場でしっかり復習、予習して次回のお稽古に臨んでみてください。
長雨が続く日はゆっくりお稽古をする日としてもいいですね。楽しみながら一歩一歩です。少しずつでも着実に積み重ねていきたいですね。私も少しでも良い指導ができるようにと、時間があるときは古典臨書にじっくりと取り組んでいます。


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コメント
ありがとうございます。
2015/07/10 09:25 by せいこ URL 編集
ブログへのご訪問、どうもありがとうございます。お役に立てたでしょうか。表現力が乏しく少しでも伝わればいいなあと思っていたので、嬉しいコメントでした。今後も宜しくお願いします。
2015/07/10 16:14 by 美帆 URL 編集
目からウロコの
「書道の基本の運筆」で検索していて辿り着きました。
数日前に書道を始めて、筆の運びがしっくり来ず、何とももどかしい思いで描き続けていたのですが、説いて頂いている「S字の穂先」に、肝心の基本の形が出来ていないからだったのか?と目からウロコが落ちる思いしております。
書道の技の構造を惜しげも無く公開していただいている、と感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
2022/04/27 12:19 by 戸塚玄治郎 URL 編集
はじめまして。ブログへのご訪問、どうもありがとうございました。
書道学習の一助となりましたら幸いです。習いはじめはしっくりこない、もどかしい思いで、思っているように進めない事が多いと思いますが、継続すれば必ず上達しますので、ご自身のペースで楽しみながら取り組んでみてください。
お稽古の場では先生の筆遣いを観察し、何度も添削を受け、自宅学習を重ねる、書の道はこれしかありません。
最近は、このブログも更新が滞っておりますが、今後もちょっとしたヒントやコツを発信していきたいと思っております。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
2022/04/27 16:03 by 美帆 URL 編集
承認待ちコメント
2022/04/28 06:35 by 編集